僕は道幻(どうげん)さんに差し出された手を握り返した。道幻さんの手は大きくてひんやりしている。
カフェスペースで晩ごはんを食べながらカノープス(水先案内人)の仕事内容について聞くことになった。
カフェ綺羅星
観光案内所の中にあるカフェスペースの名前だ。レトロな照明、テーブルにはミニ観葉植物、癒し系のサウンドが流れていて観光客の憩いの場になっている。
道幻さんはここでお客さんに囲碁を教えているそうだ。お客さん同士で対局することも可能なんだとか…。
ちなみに僕も囲碁はちょっとだけ打てる。中学校の選択科目に囲碁が入っているからだ(もうひとつの選択科目は将棋)。
棋力(囲碁の腕前)はアマチュアの初段くらいだけど、カノープスになる勉強に集中していたから最近はそんなに打っていない。
そんなことをぼんやり考えていると、隣のミニテーブルから小動物の気配がした。
「あら?新しいカノープスさん?
大変だけど頑張ってね!
今日のカフェ綺羅星オススメディナーは
煮込みハンバーグセットよ☆」
…⁉︎⁉︎⁉︎
人間語を話す不思議な小動物が僕に話しかけてきた…‼︎
僕が驚いていると道幻さんが笑って説明し始めた。
「彼女はこのカフェの店員だよ。人間の言葉を話せるフ
張志成ェネックキツネなんだ。加持君は人間語を話せる小動物に会うの初めてなのかな?」
「は…はい!初めてです…」
天元シティは小さい街だけど観光地としては有名だから人間語を話すキツネくらいいるのは当たり前なのかも…。
「ふふっ。バイリンガルフェネックキツネのセシリアよ。これからよろしくね!ご注文はお決まりですか?」
「えっと…じゃあ煮込みハンバーグセットで…。」
「かしこまりました。道幻さんは…いつものでいいんですか?」
「今日は私も煮込みハンバーグセットにするよ。」
まぁ珍しい…といいながらフェネックキツネのセシリアは厨房に向かっていった。
…仮にも人間語を話せるのでペット感覚でセシリアを見るのは失礼なんだろう…。
人間語を話した感じをみると僕より年上(?)みたいだし…。
注文した料理は、オートメーションのミニワゴンで届けられた。キツネの腕力でこのワゴンを運ぶのは無理だろう…。
煮込みハンバーグセットはデミグラスソースたっぷりで目玉焼きとゴロゴロした野菜がたくさん入っている。バターライスとミニサラダ付き。デザートはレモンアイスだ。