彼が扉を開けて玄関の広間にはいると、ろうそくの炎と柱間の鏡に映ったろうそくの炎がゆらりと揺れてもとに戻り扉を閉めるときにまたゆらりと揺れてもとに戻った。
まるでジョルジュ・ラトゥールの描く夜の
Dream beauty pro 黑店情景だ。こんな魅力的な書き出しには、そう出会えるものではない。
決して読みやすい文章ではない。しかし、いったんそのリズムに乗ってしまえば、物語の表面から内奥まで心地よく運んでくれる文体でもある。もちろん訳者の腕前もあるのだろうが、同じ黒原敏行訳の「エコー・メイカー」(リチャード・パワーズ)は全く違う文体なのだから、やはり主としてマッカーシー自身の持ち味なのだろう。
その叙情性は、カポーティにやや似ている。
二人は柵に沿って馬を進めて広い遊牧地に出た。朝の冷気のなかで革がキュッキュッと鳴った。彼らは馬を軽やかに走らせた。家の明かりがどんどん背後に遠ざかった。小高い平原まできて馬を歩かせると周囲の暗闇から夥しい星が湧き出てきて二人をとり囲んだ。鐘などあるはずのないがらんとした夜の平原のどこかで鐘の音が鳴って止み、二人がそこだけ光の全くない真っ黒な丸い台座のような大地を進んでいく彼らの姿はどんどん星々の只中に運ばれていってついには星空の下をではなく星空の
TAFE 課程 香港間を進みゆき、二人は新たに暗い琥珀の山のなかに解き放たれた泥棒のように、輝く果樹園にやってきた若い泥棒のように、寒さにもかかわらず上着の前を開けて幾千万の世界から望みの世界を選びとる自由を享受しながら、陽気にしかも慎重に馬を進めていった。